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Activity Report活動レポート

2013.5.14

活動報告

2013年5月14日、日韓フードバンクフォーラム開催しました!

2013 年5月14日、日韓フードバンクフォーラムを開催しました。

一人めの講演者は、スンシルサイバー大学校 副総長のチョン•ムソン氏です。

フードバンクのきっかけ

1998年、外貨危機により街にホームレスが増え、年間16兆ウォンの食品資源の浪費を、食品の分かち合い福祉制度に転換するきっかけとなりました。

フードバンク団体の数と組織
韓国国内には、425団体ものフードバンクがあります。

寄付食品の種類
主食(ごはん、もち、麺類)
副食
間食類
穀類や野菜などの食材
歯磨き粉、歯ブラシなどの生活必需品も取り扱います。

行政との連携について
日本は全国に30数団体、かたや韓国は425団体。これは国策として進めてきたからですが、国の支援により、民間の自発性をそこなってきたという批判も受けているそうです。そこで最近では、これからはフードバンクを民間に委譲すべきだ、という意見もあるそうです。

韓国政府の役割
全国のフードバンクに対し、韓国政府が最近、評価を実施した。評価項目としては、人的・物的資源の安定的確保、事業の効率的管理および運営の充実化、社会的寄付文化の拡散などの項目があります。

韓国の寄付文化の現状
2009年の世界寄付指数が81位だったのが、2010年には1年で57位となり、OECD加盟国では最も早い寄付増加のスピードです。

韓国のボランティア参加
寄付の増加が著しい一方、ボランティア活動参加率はOECD加盟国の中でも最下位です。

韓国食品企業の現状
不況下で、食品企業が寄付を増やさない現状にあります。企業は賞味期限ぎりぎりまで製品を販売し、残りを廃棄する傾向にあります。
一方、CJ第一製糖という大手食品企業は、賞味期限にゆとりのある通常食品を、砂糖・小麦粉などの生活必需品パッケージに生産し、フードバンクに寄付しており、注目を浴びています。寄付品であることをパッケージで明示してあるので、転売の恐れはないとしています。

今後のフードバンクの改善方向
「欠食対象者の健康維持および生活の質の向上」
「地域社会を中心とした欠食問題の緩和と解消」
「利用可能な食品資源活用の最大化」
「望ましい民間社会福祉セーフティネットの構築」

二人目の講演者は、韓国で最も大きい民間のフードバンクである、聖公会(せいこうかい)フード

バンクの代表、キム・ハンスン氏です。

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設立年
1998年の外貨危機の際、大韓聖公会が設立しました。

支援の内容
中央本部および全国30カ所の支部で、バス巡回給食、弁当配達、週間食べ物パッケージ在宅支援事業などを通じ、一日12000名の欠食者たちに食べ物を配給しています。

財源確保の方法
約1700名の正規後援者、企業・団体の後援、760カ所の正規・非正規物品後援所、事業およびプロジェクト別後援金、おにぎりコンサート基金などを通して確保しています。

フードバンク活動のアジア的適合性
1、フードバンク運動は、韓国の伝統的分かち合い文化の継承運動です。韓国の福祉予算は、OECD国家中、最下位で、貧困にあえぐ人のための社会セーフティネットは非常に不足しています。フードバンクは、構造的欠食問題の解決を目指し、食品企業、地域社会、基金後援者およびボランティアがともに取り組む広範囲な市民運動です。

2、フードバンクは資源節約運動です。韓国では、一年間に1500万トンの食料を輸入する世界3位の食料輸入国です。その一方で、食料自給率は30%未満にとどまっています。家庭と企業を通して棄てられる食料廃棄物は、一年に470万トン、経済効果に換算して15兆ウォン(1.5兆円)に相当する資源です。1000万人が暮らすソウル市内だけでも1600トンの食品ロスがあるが、これは、成人80万人が一日3食食べることができる量です。

3、フードバンクは環境にやさしい運動です。飲食物廃棄は470万トン(一年)で、その93%が埋め立て処理されています。その費用だけでも4000億ウォンにもなります(400億円)。フードバンクは、これを有効な社会福祉資源に換えています。

4、フードバンクは民間社会のセーフティネットです。韓国では、外貨危機以来、労働集約的産業の衰え、人件費や原資材価格の上昇、経済活動人口の減少により、貧困・失業などの社会問題が台頭してきています。フードバンクは、これらを救うセーフティネットの役割を担っています。

会場からの質問
Q 国(政府系フードバンク)とどう違うのか?
A 政府系では食品企業からの寄付が多いので、主に加工食品であるが、我々は、調理した食品を提供しています。

Q 財源はどう確保していますか?
A 一番は、毎月寄付をくださる後援者の方々。5000ウォンから100万ウォンまで幅広い金額。
二番めは、企業から。
三番目は、バザーや音楽会などのイベント。
四番目として、チョンドンクッパレストラン。(クッパを提供するレストランを経営し、その売上を活用する)

第二部のパネルディスカッションでは、まずあいあいねっと(フード

バンク広島)理事長の原田佳子氏から、政府系フードバンク側のチョン先生に対して質問が出されました。
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Q 課題解決のため、さまざまなステークホルダーと連携することはあるのでしょうか?

A 韓国の政府系フードバンクは、中央フードバンク(関与者:保健福祉部)、自治体と関係しているフードバンク(関与者:社会福祉協議会)、さらに細かい自治体の基礎フードバンク(関与者:細かい自治体)に分かれています。

ネットワークに関しては、国際的なネットワークを重視しており、これを強めるということ。今回の日韓フォーラムでは日本と韓国の絆を強め、さらにアジアに広めていきたいと思います。

次に、おなじく原田佳子氏からキム・ハンスン氏への質問です。

Q 市民運動を推進していくには、寄付金・助成金・それ以外などのバランスをよくしていくことだ(具体的には3分の1ずつにする)という助言を、ある方から頂いたが、そのような財源の でどころのバランスについて、キムさんはどうお考えになられるでしょうか?

A フードバンクの性格としてNPO・NGOという話が出た。財政難というものもあるでしょうが、当初から聖公会では政府からの助成金などを一切受けておりません。自分たちで運営しています。人間の顔をした福祉を目指しているので、財源的には大変でも、自分たちでやる、という姿勢を貫いています。

次に、フードバンク山梨理事長の米山けい子さんから質問がありました。

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<チョン先生に対して>
Q なぜ韓国の政府は迅速なのか。厚生労働省には何度も出向いてフードバンクの必要性を訴えたが、韓国のようにはいかないし、政治的なこととなると難しい。韓国のように推進できる体制づくりを、日本ではどう進めていけばよいのだろうか。

A 政府が主導するプログラムはたくさんあり、フードバンクもその一つである。ただ、政府がイニシアチブをとったため、政府はコントロールや管理をしようとする、という点がデメリットで、望ましくない部分も多い。福祉予算は日本よりもずっと低いのだが、その状況でフードバンクを立ち上げたがために、福祉予算を増やすという前に、企業のものを使って良いことをおこなうということを強調した感がある。そのため、福祉予算がのびないという結果になってしまった。これから民間が自立し、フードバンクを進めるべきである。募金をやりたいが、政府が立ち上げたがために、募金ができない状況に陥っている。政府系フードバンクは対象者に厳しい制限があるので、こぼれていく人が非常に多い。全国に早く広がったという点ではいいが、悪い面もたくさんある、ということ。

<キム氏に対して>
Q フードバンクファームというところで困窮者を支援しているが、病に倒れて、命もわからない重篤な状況にいる人がいらっしゃる。人と人との絆が喪われてしまう人が貧困に陥るわけだが、最後はお金やものではなく、絆や人との思いではないか。キムさんは、食べ物を差し上げるだけでなく、それ以外のケアをされていると思うが、日本のフードバンクに対する提案をお願いしたい。

A 一人の優れた人材を育ててれば、それは10万人に相当する、と、企業のサムスンが言及している。私はサムスンの製品を使ってはいないが、人間は家畜ではないので、人が育っていく過程があるし、私はそれを重要視している。韓国の大きな教会では、年末に困窮者に対して高級な洋服(上着)を配っているが、誰も着る人がいない。なぜならその上着には教会の名前が入っているから。炊き出しをする宗教団体も、お祈りを強制したりする。我々の巡回バスではお祈りなどをやることはせず、大衆に人気のある音楽をかけている。お金や権力にたよる活動は、人ひとりひとりが見えていない。ソウル駅のホームレスの方に、大学(授業)をおこなっている。大学の先生に来てもらう。その講義を聴いたホームレスの人は、炊き出しの列に並ばなくなる。仕事したい、という気持ちを起こさせること、人を助けることと、その人の自尊心をうしなわせずにどう自立させるか、ということが、私がこの10年間考えていることである。食事を届けるだけがフードバンクの使命ではないし、福祉の形ではないと私は考えている。韓国でも、独居老人は多く、一週間に一回食品を届けたら、数日前に食品がなくなっていたということもある。食べ物を届けるだけでなく「すべてのものを分かち合う」ということからフードバンクをやっていきたいと考えている。

そして、島根県社会福祉協議会の安部弘規氏から質問がありました。(よくわからない面や聞き取れなかった面があるため、わかりにくいところはご了承ください)

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<チョン先生に対して>
Q 日本で、社会福祉協議会が主体的にフードバンクをやっているのは島根だけ。日本の社会福祉協議会がフードバンクを進めていくのは大切だと思っている。日本の社協がフードバンクに取り組む上での課題や問題点、アドバイス。

A 韓国の社協(社会福祉協議会)は、日本をモデルとしている。日本との違いは、ボランティアセンターが無いことと、市民の動きです。日本であれば、社会福祉協議会へいくところ、韓国では福祉へいってしまう。社会福祉協議会が担当することで、社会福祉施設に食品を運ぶにあたって、調整がしやすい。国からみると、上からコントロールしやすいという利点がある。米国はボトムアップ方式でフードバンクが設立されたが、韓国はトップダウン方式でフードバンクが設立された。韓国のフードバンクは、地域の倉庫的存在となっている。政府がフードバンクを立ち上げた過程において、政府としては、社会福祉協議会にコーディネートして欲しいと思ったが、難しかった。2006年に政府が(食品が余っているところと足りないところのバランスを)調整すべきだという指示を出した。現在、社会福祉協議会が調整してはいるが、うまく機能していない状況。日本が韓国をモデルにしたいのなら、反面教師として使って頂きたい。

<お二人へ>
Q 政府系、民間系のそれぞれの長所・利点がマッチングしているように思っている。それぞれの利点をあわせて、恊働で何かをやる、ということ、補完できることはあるのだろうか。

そして、最後に会場から質問がありました。(よくわから

ない面や聞き取れなかった面があるため、わかりにくいところはご了承ください)

Q 政府系でおこなっているフードバンクの対象者の絞り込みが厳格であるときいたが、具体的にどういう条件なのか?就労支援や子どもに対しての学習支援、住居の確保などは、日本では家計指導となるが、韓国のフードバンクではその範囲まで支援をしているのか?(島根県社会福祉協議会の方より)

A (キム先生より)
先ほど話した通り、政府主導だったので、簡単に拡大したが、その支援の在り方ややり方については政府によって決められ、限定されるというデメリットがある。対象者は、収入に制限があり(たとえば100万ウォン以下など)そのため、急に困窮な状態に陥っても「根拠がない」と言われて支援が受けられない。また、食べ物だけでは人間の困窮の問題は解決しない。すべてにおいて人は困っているので、複合的な支援が必要。だからフードバンクだけでは限界がある。複合的な支援活動をしたいので募金活動をしたい。だが、政府主導なので、募金活動ができないというジレンマがあります。

Q 日本でフードバンクを進めるにあたり、ネットワークをつくったり、意見交換の場をつくっているが、韓国では意見交換の場はあるのでしょうか?(2HA和田より)

A 韓国では、(ステークホルダー同士の)連携は、はかられにくいと思う。1998年に、民間7団体でフードバンクを立ち上げようという話をした。初めてフードバンクを立ち上げる、産婆的な存在だと思った。政府にかけあいにいったところ、公務員は「指定性」ということにこだわったため、政府系とはやり方が同意せず、そのような排他的な態度をとられ、(活動を)分つこととなった。公共的な放送にのせてキャンペーンをしたら、お金がたくさん集まった。お金が集まったことを聞き、別の団体が参加したいと言いだしたが、仲間には入れず、最終的には集まったお金を7団体で分ける、ということになってしまった。結局、聖公会が単独でフードバンクを立ち上げることになった。

Q チョン先生のフードバンクの評価委員長という肩書きに興味を持った。チョン先生のスライドの5枚目の「政府の役割3」というところに、具体的な評価指標というのがあがっている。その中に「物理的な指標」がある。今日、全体のお話を伺って、「社会的な指標を組み込む」ことが重要だと思った。皆さんに共通しているのは「ローカルな特性」。貧困は、地域も違う、国も違う、多様性に富んでいる中を、ご苦労されて、ローカルに対応している。食品を提供するだけでなく、食品を通じて、生活構造を再編していくことに意義がある。それは社会性に関わる問題だと思う。ネットワークの質問についても、社会的なネットワークをどう構築していくかということが重要だった。政府の評価の中に「社会性」を評価する指標があったほうがよいのではと思った。企業のCSRでも、社会的な要素を入れたほうがよいと思う。評価の対象者がフードバンク団体だけでなく、企業も含めてフードバンクに関わる組織を評価したいと思った。

A (時間のため、終了)

多くの皆様のお陰で無事、フォーラムを終了しました。

ありがとうございました。

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